こんにちは、ソムタム(@somtam_aroimaak)です。
証券会社のリテール営業には、「寝かしておいてはもったいない」という、何とも身勝手な理屈があるのをご存知でしょうか?
これは証券リテールの行動指針、基本精神みたいなもので、暗黙の前提として営業マン一人ひとりに刷り込まれています。
今回は、証券リテール特有の理屈である「寝かしておいてはもったいない」について解説できたらと思います。
この記事を通じて、
- 証券会社に就職してリテール営業を担当しようとしている大学生(就活生)
- 将来的に証券リテール営業に配属される可能性のある証券マン・ウーマン
- 異業種の営業職から証券会社のリテール営業へ転職・転身をお考えの社会人
- 証券会社に口座を持っており、営業マンから頻繁に電話が来てうんざりしている方
- 証券会社の仕組みや実態、裏話が知りたい方
などのご参考になれば幸いです。
証券リテールとは?
証券会社の業務は多岐に渡ります。
いわゆる営業と一口に言っても、営業の相手先によってアプローチ手法や方法、ノウハウは異なってくるため、大きく個人客(一般の家庭)か法人(企業)かによって組織も業務も別れています。
前者の個人向け営業がリテールとなり、後者の法人向け営業がホールセールと呼ばれます。
証券会社にはこの他にも、
- インベストメントバンキング(投資銀行業務)
- リサーチ(企業調査業務)
- ディーリング(自己売買業務)
- バックオフィス(事務、経理、人事など)
などの業務があります。
「寝かしておいてはもったいない」は今回、証券リテール営業の話に絞って解説していますが、ホールセールでも同じ証券ビジネスとして根底にある考え方は同じです。
証券会社の基本は「手数料ビジネス」
証券リテールでまかり通る「寝かしておいてはもったいない」という理屈を知るには、何よりもまず証券会社の収入源を理解するのが早道です。
証券会社の収入源はいろいろありますが、基本は株式や債券、投資信託などをお客さんに買ってもらったり、売ってもらったりすることによる「売買手数料」です。
証券会社は、市場と顧客の間を取り持つ仲介者であることから、「仲介手数料」とも言われます。
例えば、ある顧客がある株式(トヨタ株などの個別銘柄)を買った時に、買付手数料が証券会社に入ります。
また、保有してた株式を売る際は、売却手数料が証券会社に入ることになります。
こうした売買手数料は、各地に店舗を構える伝統的な証券会社で、購入(売却)金額の1%ぐらいになります(ネット証券はもっともっと安いです)。
ですので、100万円相当の株式を買い付けた時には、証券会社へ1万円の買い付け手数料が入る計算となり、その株式が2割上昇して120万円相当になったタイミングで売却した時には、今度は売却手数料として1.2万円が証券会社に入ってきます(ネット証券はもっともっと安いです)。
つまり、頻繁に証券を売買してもらうことで、証券会社にはその都度売買手数料(仲介手数料、いわゆる口銭)が入る仕組みになっています。
ですので、不況時には投資活動が停滞して売買手数料が落ち込む一方で、景気が良くなると投資家の売買意欲は高まりますので、証券会社に入ってくる手数料も膨らむ傾向にあります。
証券会社が、典型的な市況産業と言われる所以です。
喉から手が出るほど美味しい「売買手数料」
最近の投資トレンドの一つに、「長期投資」「長期保有」があります。
一度買い付けた株式は、よほどのことのない限り売却はせず、中長期的な視点で株式を保有しようとする手法です。
「頭と尻尾はくれてやれ」という投資格言があるように、株価の天井(高値)で売ったり、底(安値)で買ったりすることは不可能です。
短期投資家がデイトレーダーとして頻繁に売り買いするのに対して、長期投資家はデイトレーダー的な投資行動は取らずに、中長期での上昇を見込んで買い付けします。
ですので、長期投資家は買い付けた後はそのまま放置して、日々の値下がり値上がりは気にせずに、長期での上昇を待ち続けます。
こうして銘柄を長期保有されてしまうと売買されないことになるため、証券会社には一銭も手数料は入ってこないことになります。
証券リテールでは、一度買い付けた証券をそのまま保有(放置)することを「寝かす」と呼び、長期保有(放置)された銘柄を「寝かしっぱなしの銘柄」と呼んだりします。
「寝かしておいてはもったいない」とは、こうした「寝かしっぱなしの銘柄」が手数料を生まない状態を指します。
証券会社からみれば、何かのきっかけで売買さえされれば手数料につながる原資はあるものの、手数料にはつながらず指をくわえている状態です。
したがって、手数料を生まないこうしたこう着状態を打破するべく、あれやこれやと理屈をこねながら、お客さんに売ってもらうなどの売買行為に誘うことになります。
証券リテールの得意技「回転売買」
証券会社がより多くの手数料を確保するためには、お客さんにできるだけ頻繁に売買してもらうことが重要です。
頻繁に売買してもらい手数料を生み出すための証券リテールの得意技が、「回転売買」です。
回転売買の例としては、以下のような売買になります。
- ある銘柄(例えば、三菱電機)を買い付けてもらう(手数料①発生)
- 数日後、三菱電機の株価が運よく2割上昇したので、利益確定の売りに出してもらう(手数料②発生)
- 後日、三菱電機を売却して生まれた金額で、別の銘柄(例えば、野村不動産)を買い付けてもらう(手数料③発生)
- 野村不動産がまたも値上がりしたので利益確定で売却する(手数料④発生)一方で、その売却金額を使ってさらに別の銘柄(例えば、川崎重工)を買い付けてもらう(手数料⑤発生)
こうして頻度よく売買を繰り返してもらうことで、証券会社にはその都度手数料が入ってきます。
売りまたは買いの「片道」だけにとどめない
ポイントは、「買うだけ」もしくは「売るだけ」のどちらか一方(片道)だけにとどめないことです。
買うだけで、その後は関心をなくして放置されてしまえば、さらなる手数料は見込めません。
値上がりしたタイミングでしっかり利益確定してもらうことで、手数料を確保します(上記の手数料②発生)。
また、売りっぱなしにしては、いずれキャッシュになった現金を口座から引き出されてしまう可能性があります。
口座から現金を引き出されてしまっては、商売道具を失ったのと同じです。
ですので、売却した資金を使って、できる限り早く新たな銘柄を買い付けてもらいます(上記の手数料③発生)。
売却と買付を同時に(往復で)行う
売却と買付を同時に行う(往復売買)ことも重要なポイントの一つです。
やや高度なテクニックでありながら、売却と買付の手数料が同時に見込めることになります(上記の手数料④⑤が同時発生)。
こうした回転売買こそが、証券リテールの得意技であり、「寝かしていてはもったいない」精神が花開いた瞬間になります。
できる営業マンになればなるほど、この回転売買を高速で行うことによって、手数料を荒稼ぎしています。
その辺のテクニックについては、後日またまとめてみたいと思います。
ここまでのまとめ
以上、「「寝かしていてはもったいない」証券リテールがこだわる身勝手な理屈」でした。
証券マンのアドバイスの中には、絶好の買い場や売り場を教えてくれる助言もあるとは思いますが、それがはっきり分かるのであれば、証券マンを辞めて投資家として食べていけるはずです。
売買を勧めてくる裏には、証券ビジネス、リテール営業としての固有のロジックがあるわけで、これが「寝かしていれはもったいない」の精神です。
余計なお世話です。
- 証券マンによる勧誘やアドバイスが煩わしい
- 手数料はなるべく安く抑えたい
- 自分の信念に基づいた長期投資がしたい
こうした方は、ぜひネット証券で講座を開いて投資をしましょう。
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それでは。
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